お ゆきの日々

     秋 田・八幡平の山懐

折々 の日誌】  山菜野草講座-3

  
2020.5.16

【ゼンマイ】
  今回は山菜というと
誰でもその名前だけは知っているゼ ンマイについて。
乾燥から戻して水煮にされ、袋に入って売られているのを知っているだけで、実際にはそれがどんな物かを知る人は案外少ないようだ。
山菜で知っている物ってある?と聞くと殆どの人が「ワラビ」「ゼンマイ」と答える。
けれどまたその殆どの人が二つの区別がつかない、だいたいどちらも先がクルクルッと丸まっている物でしょ、という。でもクルクルッと丸 まっているものはゼンマイだが、ワラビはブー。
ワラビは先が2~3に分かれボソボソっとちじれている物をいうが、大体の人はゼンマイと一緒になってしまっている。

 ゼンマイは買おうとすると結構高い。危険な場所に生えているからなどとも言われるけれど、それ程危険なところにだけある訳ではない。それなりに採り易い状態で生えている場所も沢山ある。
それなら何故?と思うかもしれないが、それは食べられるまでにとても手間がかかるから。


ゼンマイの下処理(ゼンマイが食べられるようになるまで)





採って帰ったらまずはすぐ周りについている綿をとる。

  

  

この下処理をしてから塩で茹で、あとは塩を振って何度も手で揉みながら針金のように細く干しあがるまで乾燥させる。何日かかかる。出来上がりは採った時の量が半端ではない位少なくなって、「えッこれだけ!」となってしまう。
食べる時はこれを水から火にかけ、手が入るギリギリの温度まで茹で、そのまま冷ます。冷めたら水を変えて再び水から茹で、冷ます、これを 2~3度繰り返したあと水にさらし、ふっくら元のような太さに戻って初めてやっと調理開始!となる。
だから食べるのは殆ど秋~春の越冬保存食となり、細くカラカラ状にした物はうまく持たせれば数年は保存できる。
ゼンマイとはこんなに手間暇がかかる山菜だが、その分サンサンと太陽を浴び栄養分もアップし、保存もきく優れた食品である。

ゼンマイの食べ     

 ①煮 物
 王道の食べ方、油揚やちくわ、ニンジンなどと炒めて 砂糖醤油。

 ②ナムル
 みじんに刻んだニンニク、さっと茹でたもやしと合わ せ砂糖少々、醤油、ごま油で和える
 ③胡麻和え
  すった白 ごまに砂糖、塩、醤油少々 で味付けした衣 と和える


ゼ ンマイ織り
  このゼンマイ、処理に時間がかかるが何が大変かって、周りを包んでいる綿をはずす作業である。
でもこのゼンマイの綿は個体によって色も様々、未ざらしの白から茶色へのグラデーションが実に美しく、自然の色の妙、いつもアルパカの植物版みたいだと感じている。
綿をはずすには延々と時間がかかる。大量の始末をしたと思っても、まとめてみるとホンのちょっとしかなくガクッとして
しまうけれど、私ははずす時の、ちょっとしめっとした綿の感触が嫌いではない。

  昔、花輪の名士のお母さんだった方?が何年もこの綿を貯めて、膨大な量の糸巻きにされていた物を見たことがある。その糸で何と、冬の和装 コートが織られていた!
ゼンマイ織りのコート、綿なので
やはり固 めでどっしりと重厚な感じ、正直言うと着心地はどんなものだったか?とちょっと気になったものだ。
気の遠くなるような作業だったに違いない。資料館で見せて貰ったが、今はどうなっているのか?
現代では趣味的に楽しみで織られる織物になっているが、綿を集めるだけでも大変な時間と労力がいるので、貴重な贅沢品には違いない。
                                            
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