おゆきの日々

 秋田・八幡平の山懐で: 

折々の日誌  寒い6月の始まり


2017.6.4

〔かつて5月末に頂上で吹雪かれた話

 
このところ本当に寒い日が続いている6月の始まりとなった。
今朝、庭のまだ若い葉の部分が残っている山椒の葉を、少しお土産に持っていっていただいた。
お客様と一緒に山椒の葉を採っている最中も寒いこと、真冬と同じ服装でも震える位だったけれど、枝を動かす度にプンと鼻に入りこんでくるあの爽やかな香りのお陰で耐えられた。
お客様も寒さに震えながらも嬉しそうに採っていかれた。

 私は山椒の葉が大好きで、盛り付けの時は普通、お客様用には葉の1~2枚を飾るのだけれど、私の分にはもっさりと盛り上げてしまう。
特に油っこかったり、くどかったりの味の場合、山椒の葉を一緒に食べるとさっぱりする。これからまだ少しは若葉を食べられそうなので、緑の山々と共に嬉しい季節でもある。
(実が写真位の大きさになるまで、あと1週間位かな?)

 それにしても寒い! 片付けてあった灯油の反射式ストーブをついに点けてしまった。
でも思い返せばこれからの梅雨の頃ともなればまだまだ寒い日はあるのが普通。
それに近年はかなり温かくなっていてそれにすっかり身体が慣れてきてしまっているけれど、いわゆる昔はもっと寒い日が多かったように記憶している。

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 もう30数年前の旧小舎時代、5月も末の30日、私は常連のS君と2人で八幡平頂上に歩くスキーをしに出かけたことがあった。
車を降りて頂上までスキーをかついで登り、八幡沼の脇の斜面を下りた辺りでスキーをはいた。
普段は木道の上がその時はもう境一つ無く一面の雪原になって、スキーツアーコースの番号板だけが目標物となっているような状態だった。
雪の無い季節にはその番号板ははるか高い頭上にあるのだけれど、雪原の頃はその板がちょっと大袈裟に言えば目線と同じ位の高さになっている。その頃は雪が多い年が続き、それ位の積雪の上を歩いていたことになる。

 歩き始めたまでは良かったけれど、急に天候が激変し、横殴りの雪が吹き付けて視界がきかなくなってきた。「おいおい、いくらなんでも5月も末だよ~!」こんな調子!
吹雪で足元位しか見えず、そこについている数人の足跡を頼りに少しずつ前進したけれど、途中でその跡は引き返していて、何となくくるっと回っただけのような感じで途中で道を見失ってしまった。
目標物を目視できない不安はいやな気分で、下手に歩き回れば怖いなと感じ、2人でしばらくその場で天候の落ち着くのを待っことにした。
幸い変わり易い天候で一瞬の止み間に避難小屋・稜雲荘の方向が見えたので、ありがたい、とそちらに一時避難することにした。

 避難小屋では他に人もいなくてS君がお茶を沸かしてくれ、簡単な昼食を食べお喋りをしながら天候の回復を待った。
さすがに5月の雪ともなればそういつまでも降り続く訳でもなく、小1時間ほど後にはまた出られるようになったので、再びスキーを付けて歩き出した。
私はへたっぴーだったが、慣れて上手いS君と一緒だったので安心してその後は歩くことが出来た。
日頃慣れている所でも天候急変の中、へたに歩き回れば命取りになりかねないこともあるようで、慎重な判断力が必要のようだ。
私にとって良く知っている筈の場所だったのに、吹雪かれて視界がきかなくなるとどこに自分がいるか全く判らなくなるという貴重な体験だった。
S君のお陰で少々スリリングだったけれど、雪原の春山を楽しく歩き滑ることが出来た。
(私にもこんなに元気な頃があったのねえ!)

 昨今の気候では、5月も末の頂上に雪が降るなんて想像できないけれど、本来は降っても特におかしい訳ではなく、色んな年があるんだなあと思う。

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 今も霧雨が冷たそうに降っている。気温は15℃にも満たない。ま、こんな日もあるさ、と思おう。

                           
                                 
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